
ソフトスキルとは、仕事を進めるうえで必要不可欠な対人系のスキルのことです。
Web制作の世界では、技術力(ハードスキル)に注目が集まりがちです。しかし、実際のクライアントワークにおいて、あなたの価値を決定づけるのは、むしろソフトスキルの方なのです。
本書では、Web制作の初心者が顧客との信頼関係を構築し、持続的な取引を実現するために必要なソフトスキルを詳しく解説していきます。
ソフトスキルとは?その意味と重要性
ハードスキルとソフトスキルの違い
| ハードスキル | ソフトスキル | |
|---|---|---|
| 定義 | 技術的なスキル | 対人関係に関わるスキル |
| 例 | ・プログラミング ・デザイン ・ライティング ・動画編集 | ・コミュニケーション力 ・提案力 ・計画力 ・マネジメント力 |
| 特徴 | ・体系化しやすい(習得しやすい) ・AIで代替しやすい ・差別化しずらい ・目先の収入に直結しやすい | ・体系化しづらい(習得しづらい) ・AIで代替しにくい ・差別化しやすい ・目先の収入に直結しづらい |
ソフトスキルの重要性
とくにWeb制作のような専門性の高い分野では、どうしても目に見えやすいハードスキルの向上に注力しがちです。技術力は数値化や言語化がしやすく、その成長も実感しやすいためです。
しかし、実際の顧客視点に立ってみると、状況は大きく異なります。顧客が真に求めているのは、高度な技術力だけではありません。むしろ、コミュニケーション能力が高く、適切な提案ができ、プロジェクトを円滑に進められる人材を求めているのです。つまり、ソフトスキルの高い人材の方が、市場における希少価値が高く、より重宝される傾向にあります。
このことから、ソフトスキルの向上に注力することは、長期的なキャリア形成において極めて重要だと言えます。適切なソフトスキルを身につけることができれば、それだけでお客様から継続的に選ばれ、頼られ続ける人材となることができます。
つまり、ハードスキルとソフトスキルはどちらが重要というわけではなく、両者のバランスが大切です。ただし、特にフリーランスとして活動する場合、差別化要因としてのソフトスキルの価値は、今後ますます高まっていくと考えられます。
クライアントに重宝されるソフトスキル徹底解説
1. クライアントとの信頼関係構築
1.1 初回ミーティングの重要性
契約後のヒアリングの際は、なるべく顔を合わせてミーティングする機会を作りましょう。
もちろん、直接会う必要はなくオンラインで構いません。案件に慣れるまでは、文章だけでは意図を完全に把握することが難しいため、直接のヒアリングが重要です。
また、顔を合わせることで顧客の信頼度が上がり、以降のメッセージのやり取りがスムーズになります。
1.2 進捗報告の仕方
制作時は、細かく進捗の報告を行いましょう。
また、制作物に定期的に確認してもらうことも大切です。進捗や制作状況がわからないと顧客が不安に感じてしまう可能性があるため、この対応は必須です。定期的に制作物を確認してもらうことで、後になって大幅な修正が必要になるリスクも減らすことができます。
1.3 制作意図の明確な説明
制作物に定期的に確認してもらう際には、その制作物の意図も一緒に伝えましょう。
「なぜこのデザインにしたか」「なぜこの配置にしたか」など、制作したサイトに対して理由を述べることが重要です。こうすることで、あなたは顧客からプロフェッショナルとして信頼され、闇雲な修正要求が減っていきます。
2. 価値提供の姿勢
2.1 プラスアルファの提案
お客様のサイト制作の目的を聞いて、引き受けたサイト制作以外にできることはないかを考えて、提案しましょう。
例えば飲食店のサイト制作を依頼された場合、サイト制作以外にも予約機能やGoogleマップの設定など、事業に関わることを積極的に考えて手伝ってあげてください。
このような姿勢で臨むことで、あなたにノウハウが蓄積され、次の顧客には有料サービスとして提供することも可能になります。
2.2 質問対応の重要性
サイト制作以外のお客様からの質問も全て回答する姿勢で臨んでください。
質問された内容について詳しくない場合は、調査して解説記事を探したり、何らかのアクションを起こしてください。「詳しくはないけどここまで調べました」というニュアンスで返信することで、あなたの誠意を顧客に伝えることができます。
2.3 納品後のサポート体制
納品後も無償で質問対応してあげましょう。一定期間の無償修正期間を付けるのも良いでしょう。
お客様は納品が近くなると「このあとは自分でできるかな」という不安が生じます。この時に質問対応が全くないと、納品することにも抵抗を感じる場合があります。「納品後も無償で質問に回答しますよ」と事前に伝えておくことで、安心して納品完了を許可してくれ、高い評価を得ることができます。
3. コミュニケーションスキル
3.1 文章作成の基本
お客様に送る文章は、常に読みやすさを意識してください。
例えば、段落で分けたり、項目には【】をつけたりと、読みやすさを重視した構成を心がけましょう。
読みづらい文章では、こちらの意図が正確に伝わらず、コミュニケーションが円滑に進まなくなる可能性があります。これは相手の時間を奪うことにもなるため、顧客満足度も一気に低下します。
3.2 結論優先の伝え方
お客様に送る文章は、結論から話し、ダラダラと長文にならないように心がけましょう。
読みづらい文章は相手の時間を奪ってしまいます。結論が中々分からない長々とした文章は読んでいて不快感を覚える方も多いので、注意が必要です。
3.3 コミュニケーションレベルの調整
お客様の知識レベルに合わせて、同じ目線でコミュニケーションをしてあげてください。
例えばお客様がサイトに全く詳しくない場合は、専門用語をなるべく使わずに、同じ目線に立って丁寧に教えてあげましょう。人はコミュニケーションレベルを合わせてもらえない人に対してマイナスイメージを持ちますので、くれぐれも注意しましょう。
3.4 メッセージのトーン管理
お客様とメッセージのやり取りをする際に、「です。」「はい。」だけだと、堅苦しい印象を与えてしまいます。
もちろん、お客様もそういう傾向の方であれば合わせて良いですが、そうでない場合は「承知しました!」や「かしこまりました!」などと明るく親しみやすいトーンでメッセージしましょう。
少しずるい考え方ですが、人はある程度親しい間柄になった相手に対し、悪い印象を抱きづらくなりますことが、心理学的にもわかっています。
つまり、お客様との間に壁を作りすぎず、少しだけ距離感を縮めることで、あなたの評価を上げることができるのです。
ただし、馴れ馴れしくなりすぎないよう、お客様側の言葉遣いも見ながら少しずつ柔らかい表現を使うようにしましょう。
4. サービス設計スキル
4.1 料金体系の確立
案件対応に慣れてきたら、料金表を作っていきましょう。
料金表を細かく設定することで、お客様は提示した価格に対してより納得感を持てるようになります。また、細かくサービスごとに料金を分けることで、サイト制作後も部分的にサービスの依頼をしてくれる可能性が高くなります。
最後に
ソフトスキルは、一朝一夕には向上しません。しかし、このガイドで紹介した要素を意識しながら日々の業務に取り組むことで、確実にあなたの市場価値は向上していきます。
特に初期段階では、以下の点を意識して実践することをお勧めします。
- 顧客との対話を大切にし、定期的なコミュニケーションを心がける
- 制作物の意図を明確に説明し、プロフェッショナルとしての価値を示す
- 依頼範囲にとどまらない価値提供を心がける
- 納品後のサポートまで視野に入れた信頼関係構築を目指す
あなたが本書の内容を実践することで、技術力だけでなく、総合的な価値を持つWeb制作者として成長できることを願っています!
